北杜市太陽光発電設備乱立の状況と今後 

 

 2012年の再エネ特措法施行後、北杜市は日照時間日本一と謳われたことが災いして、これまでに住宅地、森林などいたるところに驚くほどの速さで数多くの地上設置型太陽光パネルが設置され、太陽光パネルを見ずに歩くことが難しいまでになりました。太陽光発電設備は建築基準法上の建築物から除外されたために立地規制がほとんどありません。冷涼な気候と豊かな森に恵まれ、八ヶ岳、富士山、南アルプスの眺望に恵まれた有数の観光地でありながら、所構わず虫食いだらけのように森林が次々と伐採され、自然環境を愛しむ住宅・別荘・宿泊施設等に隣接して多くの太陽光発電設備が設置されました。

 

下記は、北杜市内に既に設置された10kW以上の太陽光発電設備の件数を示したグラフです。10kWはおよそパネル40枚で、敷地面積はおよそ120㎡です。これには平均的な住宅の屋根設置は含まれず、そのほとんどが地上設置型です。

 

2014年に302件だった太陽光発電設備は、この9年間に約7倍を超える2,200件にまで増加しました。その大部分は50kW未満となっています。(50kWはパネル約200枚、敷地面積およそ750㎡、あくまでも目安)

 

50kW未満が多い理由は、小規模の設備が多いということではありません。2021年度までは50kW未満にすれば一般用電気工作物として電気事業法上の厳しい保安規定を免れることができたために、意図的に分割をして認定を受けたものです。(2022年度より小規模事業用電気工作物となった。)本来ならば500kWとすべきものを、50kW未満を11件に分割して簡単に設置するといういわゆる分割案件が多数設置されました。20144月以降は、新規認定では原則禁止とはなりましたが、既にそれ以前に取得された認定が多数未設置のまま残されていました。制度開始当初は特に売電価格が高く、また認定自体に有効期限が設定されなかったために、認定だけを権利のように確保し、設備の価格低下を待って着工を先延ばしにしている莫大な数の事業計画があり、その多くが2022年度までに設置されました。

一方、20144月以降の認定であっても、巧みに分割案件と判断されないように別会社名義にするなど巧妙且つ悪質な手段で審査を逃れているものが多数設置され、分割案件の問題は一掃されることはありませんでした。その結果、20204月の法改正によって、50kW未満は営農型もしくは30%以上の自家消費の事業に限ることとされました。ようやく50kW未満の新規認定は大きく減少することとなりました。

もうひとつの大きな問題である多数の未稼働案件については、ようやく20234月に失効制度が開始され、認定から4年を経過して一般送配電事業者から連系工事着工申込受領を受けていない認定は無効となりました。

                                

上記20kW以上で未稼働の176件の認定日から失効期限を調査したところ、150件が失効期限を超過していることがわかりました。本来失効期限を過ぎても尚認定が残っている事業は、一般送配電事業者に連系工事着工申込を行い、受領されているものに限られます。そして、連系工事着工申込要件は、林地開発許可および農地転用許可取得済みであって、一般送配電事業者の都合のみによって連系工事が可能な状態にあるものです。要するに必要な許認可を取得済みであって、尚且つ設置に着手し、完了予定日が明確になっていることが求められるはずです。しかし、150件のうち147件については全く設置への動きがなく、計画標識の設置すらないものが大部分を占め、既に事業撤退を表明したものも含まれています。

 

これまでも太陽光発電設備設置に関しては、法令が整備された後も事前確認が徹底されることが殆どなく、法令遵守はあくまで事業者の自主性に任されていることが問題でした。

この度の失効についても、同様の問題があります。事業計画地や設置状況を明確に把握できる北杜市と山梨県と、失効を判断する資源エネルギー庁の連系強化強く求められます。失効が確実に実行されれば、長年続いたFITによる太陽光発電設備の設置の問題は、ほぼ収束することになります。

 

今後については、設置開始から10年を迎え、パワーコンディショナーの寿命が近づき、特に維持管理が十分でない多くの設備の劣化が懸念されます。現在でも夏場の雑草の手入れが全くされず、太陽光パネルを雑草が覆っている設備は少なくありません。長期に同じ場所に太陽光が当たらない場合に、発火の危険があります。特に無人の設備においては、接続箱やモジュールからの発火による火災は、大きな災害に発展する危険を孕んでいることを忘れてはなりません。

 

              【導 入 件 数

                                                                                                                                                      

~~~ 資料 ~~~

 

1.固定価格買取制度および再エネ特措法(旧 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法、現 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法))

 資源エネルギー庁ホームページ 「なっとく再生可能エネルギー 

 

2.認定・導入件数   資源エネルギー庁HP 設備導入状況等の公表、事業計画認定情報の公表