太陽光等再生可能エネルギー発電設備設置に関する検討委員会 提言書

  

・提言にあたって            

  北杜市の恵まれた自然環境は、豊かな住環境、農業、林業および観光業等を支える貴重な資源であり、将来にわたって守るべきものである。 

 

・南アルプス国立公園、八ヶ岳中信高原国定公園、秩父多摩甲斐国立公園を有する。

   ・富士山を間近に望むことができる。

   ・豊富な森林と水資源がある。

   ・日照時間が長い。

   ・標高が高く、湿度の低い冷涼な気候である。

   ・大都市(東京、横浜、名古屋等)からのアクセスがよい。

  

北杜市は地球温暖化防止対策のため化石エネルギーの代替エネルギーとしての太陽光発電や水力発電など地域の特性を生かした再生可能エネルギーの導入を進めてきた。

 

しかし、現在、北杜市内では山林や住宅地など随所に太陽光発電設備が設置され、北杜市の貴重な自然環境、景観が著しく破壊されると共に、大量の森林伐採や危険地帯(砂防指定地等)への設置により、住民の安全が脅かされる事態となっている。特に北杜市は移住先・保養地・観光地としての価値が高いだけに今後失われる経済価値、不動産価格の低下も深刻な懸念材料である。

  

これまでは北杜市太陽光発電設備設置に関する指導要綱、北杜市景観条例、山梨県太陽光発電施設の適正導入ガイドラインにより市は事業者に対して指導を行ってきたが、任意協力を求める行政指導にとどまる要綱とガイドライン、また明確な設置基準が示されない景観条例のみでは、市職員の指導も限界がある。その結果、今日の乱立状況がもたらされ、また今後も多数の未稼働案件があることから、将来にわたってもこの状況が続いていくことが想定される。

  

検討委員会としては、法的拘束力を持ち実効性のある太陽光発電設備設置に関する規制条例を制定し、適切に運用することが急務であると考える。条例の策定にあたっては、これまでの市内における設置状況、住民の被害状況、および将来発生する可能性が極めて高いリスクを検討した結果、現行の北杜市太陽光発電設備設置に関する指導要綱の内容に加えて、以下の骨子を網羅した条例とするように提言する。

  

市長および市議会は、条例制定にあたって、10回に及んだ20名の検討委員会の審議の結果としてまとめられたこの提言を最大限尊重することを求める。

 

 

北杜市太陽光発電設備設置と自然環境の調和に関する条例の骨子 

 1.対象 

 

  太陽光発電設備出力10kW以上および太陽電池出力10kW以上の設備(複数分割案件については一団として合計出力とする)で、条例施行日以降に設置を行おうとするもの。(FIT法第9条第3項の認定を受けた設備以外の設備も含む。)

 

   ① 複数分割案件は次のいずれかにあたる場合には、一団とみなす。

            a. 同一事業者

       事業者名義が異なる場合でも家族、グループ法人および法人の関係者の家族が事業者である場合は同一事業者と

       判断する。

              b. 異なる名義の事業者であっても、明らかに共同性が疑われる場合。

              c. 地権者が同一である場合。

              d. 保守点検責任者が同一である場合。

 

    ② 条例施行時に設置済み設備については、適正な猶予期間をもって、改善を行うよう別途定めるものとする。(→10.参照)     

 

 2.発電設備の設置は、許可制とする。

 

災害危険の有無、自然環境、生活環境および景観への影響設置から撤去に至るまでの計画が本条例および関係法令を遵守したものであり適正であるかを判断するための明確な許可基準(別紙1)を定め、北杜市はそれに基づき厳格に判断するものとする。また、許可基準各項目についての判断結果は、公開するものとする。

   但し、建築物の屋根に設置する太陽光発電設備については、設置届とする。

  

 3.発電事業者に対して、事業の計画段階での周辺住民等(住民、土地所有者等、設置により影響を受ける者全て)への事業計

       画の周知義務と、周辺住民等との合意形成のための最大限の努力義務を課す。

 

  ①   計画段階で、事業計画地の公道より見えやすい場所に発電設備設置計画を示す標識を設置すること。

     条例施行時に既に認定取得済み(みなし認定を含む)の事業計画地には、条例施行後60日以内且つ説明会開催日の30日前

          までに標識を設置すること。

     標識:名称、所在地、発電出力、発電事業者および保守点検責任者の氏名、住所および連絡先電話番号、設置工事開始予定

          日、運転開始予定日を記載したもの。

      FIT認定設備については設備IDも記載すること。

 

② 事業者による事業計画説明会の開催を義務とすること。

          説明会の議事録、出席者の署名および周辺住民等からの意見および要望に対する対応策等を明記した説明会開催結果報告

         書を、市への許可申請時に提出を義務づけること。

  

③ 事業計画説明対象者(周辺住民等)の定義:

          事業計画地の敷地境界より100m以内の住民および土地・建築物所有者を最低限度として、設置により影響を受けると考えら

         れる合理的な理由のある全ての住民、土地および建築物所有者、および地域住民団体(行政区および自治会等)の責任者。

 

       但し、建築物の屋根に設置する太陽光発電設備については、上記①~③は除外し、反射光の影響がある場合にのみ該当する

         住民への説明を行うものとする。 

 

  4. 防災上危険な地域および貴重な自然環境や景観として守るべき地域を定め、禁止区域とする。但し、建築物の屋根に設置す 

        る太陽光発電設備については、除外する。 

         設置禁止区域: 国立公園、国定公園、保安林、砂防指定地、土砂災害特別警戒区域、

                                 土砂災害警戒区域、その他北杜市の指定する区域(例:水源地域等)    

 

  5. 設備設置にあたっての残地森林率、植栽の設置基準、離隔距離、および発電設備の高さ制限を明確に定めること。但し、建

        築物の屋根に設置する太陽光発電設備については、除外する。

 

山岳景観形成区域: 

① 敷地境界から5m以上(営農型発電設備の場合には、太陽光発電設備の高さの3倍以上)の幅の面積または敷地周囲に全敷地の25%以上のどちらか大きい方の面積に残地森林もしくは造成森林を設けること。

               隣接地に住宅がある場合には、敷地境界から10m以上(営農型発電設備の場合には太陽光発電設備の高さの6倍以

                  上)の残地森林もしくは造成森林とすること。

  

  ② 防護柵の外側に常緑樹で植栽を施すこと。植栽は、設置工事完了時に発電設備および防護柵と同じかそれ以上の高さのものとし、隣接地および周辺地域より設備を概ね見通すことができないようにすること。

 

    太陽光発電設備の高さ(太陽光モジュールの最高点までの高さ)は、地盤面から垂直距離で1.5mを超えてはならない。

           但し、営農型発電設備の場合には、除外する。 

 

田園集落景観形成区域

         ① 敷地境界から発電設備までの離隔距離を5m以上(営農型発電設備の場合には太陽光発電設備の高さの3倍以上)とし、

             護柵の外側に常緑樹で植栽を施すこと。植栽は、設置工事完了時に発電設備および防護柵と同じかそれ以上の高さのもの

             とし、隣接地および周辺地域より設備を概ね見通すことができないようにすること。

 

◎ 隣接地に住宅がある場合には、敷地境界から10m以上(営農型発電設備の場合には太陽光発電設備の高さの6倍以上)の離隔距離をとり、緑化を行うこと。

 

   ② 太陽光発電設備の高さ(太陽光モジュールの最高点までの高さ)は、地盤面から垂直距離で1.5mを超えてはならない。

           但し、営農型発電設備の場合は、除外する。

 

  6北杜市は、危険な設置工事防止のための事前確認を行うこと。

    但し、建築物の屋根に設置する太陽光発電設備については、除外する。

 

  ① 架台のJIS規格遵守を担保するため、設備設置許可申請時に標準仕様で設計したことを確認できる文書若しくは強度計算書

         の提出を義務付けること。

         尚、標準仕様で設計を行う場合であっても、高さ制限内に収まるようにすること。 

 

  ② 分割案件および複数事業者が隣接して事業を行うことによる林地開発逃れを防止するために、北杜市は設備設置許可申請受理時に必ず資源エネルギー庁の自治体への認定情報の提供により広域的に周辺の認定状況を確認し、合計面積が1haを超えないことを確認する義務を負うこと。 

 

7. パワーコンディショナーは、騒音、低周波音および電磁波による住民への被害を最小に抑えるために、周辺に建設済み、建

      設中および建設計画か確定している住宅から最も遠い事業敷地内の場所に設置すること。

 

8. 北杜市は、設置工事終了後に許可内容通りに工事が行われたことを現地確認した後に完了通知を事業者に発行するものと

      する。事業者は完了通知を受理するまでは、発電設備の運転を開始してはならない。

  

9. 設備の売却、事業継承等により事業者が変更した場合には、北杜市への届出と標識の変更を30日以内に行うことを義務化

      すること。

          標識とは、設備着工前においては北杜市条例で定める太陽光発電設備設置計画標識であり、FIT認定設備において設備着工

         後は資源エネルギー庁事業計画ガイドラインの定めによる標識である。 

 

10.条例施行時に設置済みの設備については、適正な猶予期間を定めて土砂災害、水害等の災害危険要因の解消、電気設備

       の技術基準への適合(太陽電池アレイ用支持物設計基準JISC8955と同等の強度であること)、条例で定める植栽の設置お

       よび高さ制限に合致するようにすること。

       但し、高さ制限については、JISC8955と同等の強度計算に基づく設備であって且つ次の事項にあてはまる場合には除外する。

           ①  隣接住宅がある場合に敷地境界から10m以上の離隔距離がある場合

     ② 隣接住宅がない場合に敷地境界から5m以上の離隔距離がある場合 

 

11.条例に違反した場合には、氏名の公表および罰則を科すこととする。 

 

 

 (但書き)

     掲載の提言書は、検討委員会に委員として参加した共同代表が配布資料を基にホームページ掲載用に入力し直したものです。文言・内容は市長へ提出された提言書と同じですが、フォントや体裁は多少異なりますのでご了承ください。原文は、「北杜市太陽光等再生可能エネルギー発電設備の設置に関する検討委員会」ホームページをご参照ください。

                       ↓

      https://www.city.hokuto.yamanashi.jp/docs/5334.html

 


別紙1                      許可基準項目

 

                                        ( 1/2 )

 

                                (2/2 )